令和元年の平均有効求人倍率は1.60倍と発表されましたが、これは過去最高の1974年1月・2018年9月の1.64倍にも迫る数字です。
総務省の「労働力調査」によると年間の転職者数は2019年では351万人と過去最高の人数を記録しています。
2019年の雇用者数5660万人のうち351万人が転職しているということは、16人に1人は転職していることとなります。
では、いったい何故過去最高の転職者数を記録するほどの採用難の時代が到来したのでしょうか。採用難を克服する以前に、自社で抱える問題点を整理してみましょう。
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「良い人」が採用できない…そもそも「採用難」ってどうして起きているの?

採用難の理由①団塊の世代の退職によって生じた問題
戦後の日本ではベビーブームが到来し、1947年~1949年の3年間で800万人以上の赤ちゃんが誕生。いわゆる「団塊の世代」の誕生です。
団塊の世代の退職による問題はいくつか挙げられますが、大きなポイントは4つに絞られます。
- 労働人口が大幅に減少すること
- 専門知識やスキルの継承問題
- 企業単位で負担する退職金の支払い
- 定年退職者の増加による国内貯蓄率の減少
企業が抱える人材不足に拍車をかけ、退職金の支払いにより負担が増え、若手育成にも時間が掛かる。多くの中小企業では少なからずダメージを追ってきました。
採用難の理由②新人に求めるスキルが高すぎる
抜けた穴を埋めたい一心で新人に求めるハードルを高く設けている場合が多々見られます。あらかじめスキルを持った新人を採用できれば教育にかかる費用も時間も節約できますが、大多数の優秀な求職者はスキルを活かすために大企業や独立ありきの働き方を好みます。
新人があらかじめ持っていれば企業にとって優位となるスキルを今一度整理してみましょう。
- 学生気分から脱却した社会人としての視野を持っている
- 社会人として必要最低限のマナーを身につけている
- タスク管理能力に長けていて、コストに関する意識も持っている
- 報告書や必要書類に目を通す側の視点にたち、文書を構築できる
- 社内外問わずにコミュニケーション能力を発揮できる
- officeソフトの操作など、基本的なPCスキルがある
あげればキリがありませんが、これらが身についている優秀な人材を採用するためには、それ相応の報酬や福利厚生が求められます。
採用難の理由③コロナウイルスによって就職活動が困難に
2020年の頭に世界中で蔓延しはじめたコロナウイルスは、経済活動にも大きな影響を与えました。日本国内でも感染者の増加が続き、経済活動だけでなく就職活動にも影響が生じています。
たとえば多くの人が集まる企業説明会や就活イベント、合同説明会は軒並み中止や延期となりました。就活生と企業がコミュニケーションを図れる数少ない機会を失ったことは双方に大きなデメリットとなり、応募にすら至らないことも。ましてやインターンシップを受け入れてコロナウイルスへの感染ルートとなれば責任を問われます。
従来のスタイルであった現地で意思を疎通させる機会に変化が求められることが、コロナウイルスによってもたらされた大きな影響の一つだと言えます。
採用難の理由④業務に見合った条件を提示できていない
優秀な人材を採用するにはそれ相応の報酬や福利厚生など、人材に見合った条件を提示することが求められます。数ある求人情報の中から取捨選択するのは企業ではコントロールできず、求職者側の意思に委ねるしかありません。
「月収○○万円以上、年収○○○万円以上」などの収入面を重視します。
「完全週休2日制」「年間休日○○○日以上」など、各種休暇制度の充実。
ほかにも社会保険完備をはじめ、各種手当の支給や昇給・賞与などの待遇も選ばれるためには重要なポイント。
これらはあくまでも「業務に見合った条件」です。求めるスキルが高ければ高いほど、提示しなければいけない条件は吊り上がるものなのです。
採用難の理由⑤社内での教育体制に問題がある
はじめのうちは戦力にならない人材も無限大の可能性を秘めているといえます。真っ新な状態の新入社員には社内での教育が必要不可欠。
時間と費用はかかりますが、逆に言えば時間と費用さえ掛けることができれば、いずれは優秀な人材にもなり得るということ。
新人に何を身に付けさせればいいのか、どうやって育てていけばいいのか悩まれる企業も多いはずですが、社内での教育体制が整っていれば、そもそも「優秀な人材を雇う必要はない」のです。
良い人が採用できない場合、自社にも責任があると考えよう

自社を見直す①まずは離職率を見直してみてみる
2019年の秋に厚生労働省が発表した「新規学卒者の離職状況」によると早期離職率は大卒で32.0%、高卒で39.2%というデータが出ています。これは3~4人に1人が3年以内に退職しているということを指し示します。
時間と費用をかけて育てた人材を手放してしまうことは、これまでにかけたコストを全て失ってしまうということ。離職に至る問題点を浮き彫りにする前に、一度自社の離職率・早期離職率を数字に出してみましょう。
自社を見直す②マネジメント能力が低下している
マネジメント能力不足は数々の企業が抱える共通の問題として挙げられます。
とくにスタッフ平均年齢が高い企業では、ひとまわり、ふたまわり年齢の違う社員とコミュニケーションをとらなければいけない場合も往々にしてあります。
価値観の違う「最近の若者」のことを理解し、コミュニケーションがとれなければ時代にあったマネジメントを行うことはむずかしいでしょう。
自社を見直す③コミュニケーションが不足している
平成30年の1年間で転職者が前職を辞職した理由が厚生労働省が行った「雇用動向調査」の結果から顕著にあらわれています。

「定年・契約期間の満了」が16.9%と最も多い理由に挙げられますが、前年度に比べて上昇幅が最も大きいのは男性が理由に挙げた「職場の人間関係が好ましくなかった」ということ。女性に関しては辞職理由の2位となっています。
実は「職場の人間関係で悩んでいる」という事象は日本全国どこの企業でも起こり得る問題の一つなのです。「人間関係の悩みは当人同士のことだから」と諦めてはいませんか?近年では社内のコミュニケーションを見直し、活性化させるために独自の方法を取り入れている企業も増えています。
ビジネスチャットツール
社内でコミュニケーションを図るためにビジネスチャットツールを導入している企業が増えています。
ITツールに依存してしまうことは顔と顔を合わせた交流が減ってしまうリスクもあるため、「便利なものを便利に使う」程度に抑えることがお勧めです。
代表的なツールとしてchatworkやslackなどが挙げられます。
フリーアドレス制度
これは内勤に限られる取り組みですが、デスクを指定せずに好きな席に座って仕事をする制度です。
日によって隣になる方が変わるので社内でのコミュニケーションがいきわたるというメリットがあります。ビジネスチャットツールと併用すればわざわざ用事があるときに必要な人を探す手間も省けます。
自社を見直す④収入面の満足度が低い
直球過ぎて目を背けたくなる話題ですね。ですが、無視できない話なのでしっかりと目を通してください。
先にも紹介した厚生労働省による平成30年の「雇用動向調査」の結果では男性が辞職した理由の第2位が「給料等収入が少なかった」。女性でも8.8%と決して楽観できない高い数字を出しています。
本心では「この給料ではやっていけない」と思って辞職している方がほとんどだったりします。
基本給の他にも残業代が正当に払われず、サービス残業が多いことや固定残業代のシステム、ボーナスの支給額の低さなども「収入の不満」に含まれます。
収入は精神的なゆとりにもつながるもの。自分の年齢で貯蓄額の平均を検索した日には「転職」が浮かんでも不思議ではありません。優秀な人材・優秀に成り得る人材を手放したくなければ、人件費の見直しは効果的だと言えます。
自社を見直す⑤コンプライアンスが徹底されていない
コンプライアンスとは企業経営では「法令順守」のことを指しますが、法律で定められていないにしろ「倫理」に反することもコンプライアンスに含まれます。
・2017年の野村不動産の男性社員の自殺の労災
・2018年のWENカンパニーの社長が約1億3000万円の助成金の不正受給
・2019年の7Payの第三者による不正アクセス
挙げればキリがありません。身近な話題で言えば「残業代を稼ぐためにダラダラと残って仕事をする」なんてこともコンプライアンスの問題にも取り上げられます。
このような社会規範に反することを許す会社に自ら身を置きたいと考える従業員は多くありません。
対策としては行動基準や基本方針を明確化することや相談窓口を設けること、監査を徹底することが挙げられます。専門家によるセミナーを受講させることで意識改革から始めることも良いかもしれません。
自社を見直す⑥働き方の多様化を理解していない
さまざまな働き方改革が行われる昨今「働き方の多様化」が求められることは少なくありません。新型コロナウイルスの影響を受けて増えたのが「テレワーク」の導入。
24時間工場を稼動させる必要がある企業では難しい問題ではありますが、今一度これまで当たり前だった働き方を見直してみてはいかがでしょう。企業にとってはベストな形でも、従業員にとって同じとは限りません。
アルバイトやパートで短時間勤務ができれば家事や育児、学業と両立することだってできます。「良い人を採用したい」という想いがあれば正社員での雇用という概念から一度離れてみることも検討してみましょう。
自社を見直す⑦社員の声に耳を傾けていない
先述した「コミュニケーションが不足している」という問題とも似ていますが、これは経営層と従業員の間での話です。
一方的な行動指針やコンプライアンスの提示だけでは押し付けです。では、実際にどのような機会を設ければ現場のスタッフと目線を合わせることができるのか。独自の制度を取り入れている企業をご紹介します。
株式会社サイバーエージェント https://www.cyberagent.co.jp/
2005年あたりからサイバーエージェントが取り入れているのが「月イチ面談」。月に1回、上司と部下がマンツーマンで行う面談です。
先月の成果を振り返り、今月にどう活かすのかを話し合う機会となりますが、上司と部下が直接気兼ねなく話せる機会ともなります。
こうしたタテのコミュニケーションが円滑であれば、信頼関係が生まれ不平不満を聞き出すいいきっかけになるかもしれません。
ヤフー株式会社 https://about.yahoo.co.jp/
上記のサイバーエージェントにも似ていますが、ヤフーが2012年から取り入れたのが「1on1ミーティング」。週に1度上司と部下が30分間の対話を行うという取り組みです。
株式会社ビズリーチ https://www.bizreach.co.jp/
こちらも上記2社に似ているのですが、ビズリーチでは「経営陣メンター制度」という新卒社員が経営陣と直接対話する機会を取り入れています。
対話の内容は新卒社員が先導し、経営陣がそこから問題を抽出する。あらゆる視点を持つ経営陣から直接学ぶ機会は新卒社員としてはとても貴重なもの。若手の早期離職を防ぐきっかけにもなります。
自社を見直す⑧採用フローが時代に見合っていない
そもそも御社ではどのように採用活動を行っていますか?
規模の小さな会社であれば紹介による入社というケースも少なくありません。つまり、採用フローが決まっていないという企業も多いのです。ここでは新卒採用の場合の採用フローを取り上げてみましょう。
まず企業側で行わなければいけないアクションは
では、応募者側で行わなければいけないアクションは
業界や職種によってもケースは様々ですが、一般的な流れは上記の通り。
多くの企業がこのような取り組みに力を入れることで良い人を採用しています。が、大企業であれば問題ありませんが採用活動にコストや人員を避けられない企業にとっては非現実的な流れです。
では、実際の採用フローを見直すためのポイントを次の章でご紹介します
多くの企業が陥る良い人を採用できない採用フローの改善策

大手の求人広告を充分に活かせていない
新卒採用となれば先述したフローでの採用活動が行われることが主流ですが、中途採用では求人サイトを活用した転職活動が多く見受けられます。
代表的な主要転職サイトには「リクナビネクスト」や「doda」「マイナビ転職」「エン転職」などがあげられます。紙媒体なら「タウンワーク」がフリーペーパーの求人雑誌として高い認知度を得ています。
認知度が高い分、応募者の母数も多いことは最大のメリット。しかし大手求人サイトや求人雑誌から効果を得られないのであれば、今一度求人媒体の活用方法を見直さなければいけません。
自社HPに惹かれるポイントをプラスする
多くの求職者は応募前に企業HP(コーポレートサイト)をチェックします。
そもそも企業HPは応募者に向けたものではなく、企業全体のブランディングや認知度を高めるもの。企業概要やサービス内容、会社の歴史、代表の挨拶、IR情報など企業全体の情報を発信するものです。求職者ではなく、取引先や顧客、株主などのために存在します。
しかし、それらの情報は「自分がここで働くかもしれない」という状況の求職者にとっても必要な情報の一部。入社後に「思っていたのと違う」なんてギャップをなくすためにも得ておきたい情報なのです。
今一度、自社HPを見直してみるのも一つの手です。
求職者目線でメリットになり得る情報を記載できれば、問い合わせ数が増えるかもしれません。
ミスマッチはコストを無駄にする
入社まで慎重に見極めたはずの社員が早期離職してしまっては、採用までに掛けていた時間とコストが全て水の泡になってしまいます。
これまでにも経験があるのではないでしょうか。急に出社しなくなり、連絡が取れなくなってしまったなんて事案もよく耳にします。
利用企業数国内No.1の求人サービス「エンゲージ」を手掛けるエン・ジャパン株式会社によると、社員1名が入社3ヶ月で離職してしまった場合の損失は187万5000円。これはたった1名での数字です。
採用のミスマッチによる競争率の低下
企業側にとっても「良い人を採用したかったのに、期待以上の成長が見られない」となれば現場のレベルが下がる可能性もあり得ます。
会社にとっての良い人を採用できなくても、簡単にクビにはできません。むしろ、希望退職を期待する日々…。そんな生産性のない人材を抱えても利益には繋がりません。
ここで最も恐れなければいけないポイントが、ミスマッチで採用した人材が管理職や人事に就いてしまうこと。会社が求める人材ではなかった従業員が採用するのは、果たして会社が求めるレベルに達しているでしょうか。
ミスマッチを防げば、採用活動は円滑に
では、あらかじめミスマッチを防ぐためにはどのような施策が有効でしょうか。
いくつかポイントを絞って各企業の取り組みをご紹介します。
リファレンスチェック
欧米や外資系企業で多く取り入れられているのが「リファレンスチェック」。
書類や面接で判断した能力が事実に基づいているのかを確認することを言います。
中途採用であれば前職の企業での同僚や上司に当たる方など、第三者を通じて事実確認を行います。リファレンスチェックをすることで学歴・経歴詐称やこれまでに起こした重大な失敗をあらかじめ知ることもできます。
お試し就職
副業・転職のリファラるプラットフォーム「YOUTRUST」を運営する株式会社YOUTRUSTではミスマッチを防ぐために「お試し就職」を推薦しています。
これは現職を続けたまま副業や社会人インターンとして転職前にお試しで働いてみるということ。
一度自社で働いた経験がある方であれば能力や素質、性格を知ることができます。正式に採用する前にお互いに知りたいことを知ることができる取り組みです。
すぐに取り組めることとしては面接時に見学をしてもらったり、会社のデメリットもしっかり伝えることも効果的です。
良い人を採用するために採用フローを見直してみよう

自社HPを改めてみる
大手求人媒体まで立派な情報を載せられなくとも、自社HPに採用ページを作ることはそう難しくはありません。
自社HPを外注しているなら載せたい情報を外注先に依頼すればいいだけの話です。ですが、それが効果的かどうかは別の話。
先述した通り、大手求人媒体が製作部門として広告代理店と契約していたり、効果を生み出すためのノウハウは専門分野の話になります。
自社HP(コーポレートサイト)に採用ページをリンクさせているのであれば、まずは結果が出せているのかどうかを確認してみてください。
採用できているのであれば、どのような人材が採用できているのかを確認してみてください。会社にとっての良い人を採用できていないのであれば改善の余地はあります。これは弊社が最も得意とする分野です。
関連記事:採用とwebマーケティングに強い「イチゲキ」の「得意分野と特徴」
改めて採用人物像を再考してみる
ここで今一度考えてほしいことがあります。御社にとっての「良い人を採用したい」の「良い人」に当たるのはどのような人物ですか?
採用したい人物像が明確になっていなければ、まず良い人を採用することはできません。
まずは「なぜ採用活動を行わなければいけないのか」を再確認しましょう。
欠員募集であれば退職する従業員の代わりを見つけなければいけません。後任者として適したスキルが求められることが明確になります。
次に行うべきなのがペルソナの設定。
本来はマーケティング手法の一つで、商品やサービスを利用する消費者像を実在する人物かのように設定することです。
採用したい人材のペルソナを設定することが、訴求すべきポイントを絞るために必要となります。
ターゲットを明確にすることで求人票や求人媒体にどのような情報を記載すべきかが見えてきます。
大手の求人広告は自らコントロールする
大手の求人広告に求人を掲載する際、多くの場合は求人媒体を運営する企業の営業が情報をコントロールします。
どのような人物を採用したいのか、どのような情報を載せたいのか、営業は様々な情報をインタビュー形式で聞き出してくるはずです。
それもそのはず。営業は数字を出してなんぼの商売。御社だけには構っていられません。
手間と時間はかかりますが、効果的な求人広告を掲載したいのであれば自らコントロールすることが大切です。
ESPの導入を検討してみる
ESPとはビジネス資質を判断するために開発されたプロモーション社製のWEBテストです。
ペルソナ設定で明確にした採用ターゲットの人物像に近いかどうかを判断するための一つの方法にもなります。
入社段階でのビジネス素質がなくてもストレス耐性があれば、自らの成長度合いにやりがいを見出すかもしれません。
性格心理学「ビッグファイブ」って?
アメリカの心理学者ルイス・ゴールドバーグ氏が提唱した性格心理学「ビッグ・ファイブ」は是非、人事で取り入れておきたい理論です。
「ビッグ・ファイブ」は「調和性」「誠実性」「外向性」「開放性」「神経症傾向」の5つの因子から構成されます。どの因子を持つ人材が仕事をできる良い人かというと…正確には言い切れません。というのも、職種によっても異なるからです。
営業であれば「開放性」が高いほうがセールストークに花が咲きます。
事務職であれば「誠実性」がなければ数字を任せることができません。
「神経症傾向」が高い方を避けていいかというと、そうでもないのです。感情的な性格を持っていればクリエイティビティな思考ができるので、デザイン職には最適だと言えます。
このようにビッグ・ファイブに基づいたテストを実施すれば、設定したペルソナの近い良い人を採用できる可能性が高まります。
優秀な人材が育つ流れをつくる
良い人を採用できなければ、人材を育成することも一つの手です。むしろ、企業レベルでの成長を見込めるのは「良い人を採用する」か「人材を育成する」の二つしか選択肢はないと考えておきましょう。
指導者に適任な人材を選定すること、そもそも適任者を育てることが必要になります。
時間とコストはかかりますが、目的な明確であれば研修を行うのも効果的です。複数人で共通意識を持ち、共に同じ情報を学び合うことは協調性の向上にも繋がる場合があります。
ただし目的に合った結果が見いだせなければ時間とコストの無駄になります。
自己啓発費を会社で選出することも育成に繋がります。自ら学ぶ環境を作り出せる人材であれば教材を購入したり、自ら受ける必要がある研修を受けたりと、自発的に学習を進めることができます。モチベーションの高い従業員ばかりであればコストをかけてもおつりはくるでしょう。
採用したい良い人材・採用してはいけない人材

管理者・プレイングマネージャーを見つけ出す
そもそも管理職に就いている従業員が指導者として適任でなければ、ここでも採用が必要になります。
一番理想的なのはプレイイングマネージャーです。野球で言うならば選手として試合に出ながら監督も行うプレイヤーのことを差します。
総務省が平成30年に行った労働力調査によると35歳~44歳の転職者数は65万人、45歳~54歳では55万人という結果が出ています。管理職に当たる中高年層の転職者数にも年々増加傾向が見られているのです。
管理職を採用することは人材育成の他に他社から見る企業の課題を見つけ出せたり、培ってきた知見から新事業を立ち上げられたりとメリットがたくさんあります。
外交的な性格を殺してはいないか
今城志保氏の著書「採用面接評価の科学」によると、外向性の高い方は面接で高い評価を受ける傾向にあるそうです。
しかし「ビッグ・ファイブ」でいう「外向性」の高い人は好奇心が旺盛な反面、飽き性なタイプが多く見受けられます。
「明るく元気で良い人」でも適材適所があります。毎日同じことの繰り返しに飽きてしまっては「仕事を辞めたい」と思うようになります。
外向的であれば顧客とコミュニケーションを取る営業が適任だと言えます。営業でなくても職場の雰囲気が明るく、常に笑い声の絶えない環境であればきっとすぐに馴染んでくれるでしょう。
外交的な性格を長所にするか短所にするかは、企業側の問題だと言えます。
内向的な性格に隠れる魅力
では逆に、内向的な性格の方であれば採用してはいけないのかというと、そうではありません。
先にも「ビッグ・ファイブ」の「神経症傾向」がある方はクリエイティブな仕事に適した性格と説明した通り、性格によって適した職種や環境があるのです。
例えば経理といった事務作業を行う場合、常に数字とにらめっこ。
よく言えば積み重ねが大切なポジションで、悪く言えば毎日同じ作業の繰り返し。
コツコツと、黙々と目の前の作業に没頭できるのは内向的な性格の方が強い傾向が見られます。エンジニアやプログラマー、研究・開発職でも同じことが言えます。
共通するのは「自己認知度の高さ」
任せる仕事によって「良い人・優秀な人材」の定義が変わることは先にも述べました。しかし、優秀な人材には共通点が見られます。それは「メタ認知度の高さ」。
アメリカの心理学者ジョン・H・フラベル氏が定義した概念。1970年代から研究が進められてきた認知心理学の一種です。
期限を辿れば「無知の知」を提唱した古代ギリシャの哲学者ソクラテスまで遡りますが、「メタ認知」は自分自身を客観的に捉える能力のことを言います。
ビジネスに置き換えれば自分の性格やスキル、志向性を自己で認識できているかどうか。正確に自分自身を理解できていれば、自分がどんな仕事に向いているのか、仕事の場で自らの能力を発揮できる場面を把握できます。
逆に自分が不得意とする分野に目を向けることもできます。メタ認知度が低ければ他者からのフィードバックでしか自らを知る由はありませんからね。
さて、自社に必要な人材のタイプは?
管理職に向いている人材、外向的・内向的、メタ認知度の高さに絞ってお話ししてきましたが、あらためて採用したい自社にとっての良い人を再考してみましょう。
採用に当たって一番重要なのは、本当に自社にとって良い人を採用するための「良い人」を言語化することです。
本当に自社に必要な人材とはどんなタイプの人材なのか。
漠然と「営業の新人が欲しい」「作業員を増やしたい」「ドライバーを5人雇いたい」「とりあえず事務さえできれば」では良い人を採用できません。
あくまでもスタートラインです。自社に必要な人材のタイプを言語化してみましょう。
自社にとっての良い人を採用する方法とは

地元にこだわらず、遠方からの採用を検討する
地方行政法人労働政策研究・研修機構の調査では「地元に帰りたい人はどのくらいいるか」という質問に対し「戻りたい」「やや戻りたい」と答えた地方出身者が45.1%も占めています。
Uターン希望者が行政に望んでいる支援は「転居費用の支援」が19.6%、「無料職業紹介」が16.4%、「公営住宅、定住住宅、家賃補助等」が15.8%。中でも一番多い要望が「希望者への仕事情報の提供」が25.2%でした。
仕事情報の提供であれば、行政ではなく企業単体でも解決することができます。
都市部に住んでいようが、稚内に住んでいようが、沖ノ鳥島に住んでいようが、インターネット環境さえあればHPは閲覧できます。
各地方から優秀な人材が集まるのであれば地元採用にこだわるのは悪手です。求職者の目に留まりやすいHPの制作を検討してみましょう。
関連記事:<採用サイトの制作>結果が出る秘訣はコンテンツの作り方にコツがあった
新卒・第二新卒から原石を発掘する
企業への忠誠心や愛着を持たせやすいのは新卒・第二新卒者を採用する上での一番のメリットと言えるでしょう。
若手で職場環境を構築し直すことができれば、従業員の平均年齢が下がるので企業としての寿命も延びます。
もちろん、デメリットもあります。戦力になるまでは育成に時間もコストも掛かりますし、ミスマッチを防ぐための事前の対策を練らなければいけません。
企業の経営状況によっては先行投資を行えませんし、世界情勢によっても左右されます。長期的な育成を前提とした採用であれば、新卒・第二新卒から原石を発掘するのは必要経費と言えるでしょう。
外国人労働者の雇用を検討する
鋼製等同省が2019年1月に発表した「外国人雇用状況」によると外国人労働者数は約146万人と、届出義務化以降、過去最高の人数を記録しています。
外国人労働者数が多い上位3都府県は「東京:43万8775人」、「愛知」15万1669人、「大阪:9万0072人」とそもそも人口の多い都市部に集中しています。
しかし、増加率が高い上位3府県では「熊本1万0155人」、「大阪:9万0072人」、「鹿児島:6892人」と地方でも外国人労働者が増えていることがわかります。
外国人労働者を採用することのメリットは、単純に人材不足を解消できることや若い人材を採用しやすいことが挙げられます。さらに2010年に楽天株式会社で英語を公用語化したように、社内のグローバル化も図れます。
逆にデメリットで言えば就労ビザの取得に1~3ヶ月を要したり、就労ビザの取得費用・渡航費用などのコストも掛かります。円滑にコミュニケーションを取れなければ早期離職に繋がる場合も。
関連記事:外国人アルバイトを雇用するには?メリット・デメリットや求人方法は
採用活動でもPDCAサイクルを徹底する
PDCAサイクルは「Plan:計画」「Do:実行」「Check:評価」「Action:改善」を繰り返す微子ネスの管理手法の一つです。PDCAサイクルは採用活動でも有効的に活用することができます。
「採用活動を計画する」「募集・面接・選考・内定」「実行した採用活動の分析」「分析した結果を採用活動に反映させる」でしょうか。
自社HPに採用ページを設ける、採用サイトを制作する、会社説明会を実施する、書類選考・面接、内定後のフォローなど業務を細分化するところから検討してみてはいかがでしょうか。
新規ビジネスへ参入する
従業員を新規ビジネスの担当者にするのであれば後任者が必要です。新規ビジネスの分野でノウハウを身に付けた人材を採用するのであれば尚のこと。
転職者数の増え続けている数々の調査がその証。「この会社で燻っている場合ではない」と悩んでいる人材は日本中にいるのです。
新たな事業を立ち上げた経験がある方だけでなく、その分野に明るい方も即戦力になりますよね。
育成ができない場合は既存事業と異なり、効率性や生産性を高めるために手探りな状態となるので新規ビジネスの参入と採用は並行できません。
新規事業を進めながら新人育成を並行できるのであれば、積極的に若手を採用するのも手です。
入社前から信頼関係を築く
先にもご紹介した「お試し就職」のようにインターンシップや副業でのアルバイトなど、入社前に信頼関係を築けることができれば、自社にマッチする人材かどうかを判断できます。
企業によっては「トライアル期間」や「お友達期間」と呼び方は変わりますが、企業と求職者にとっての入社前と入社後のギャップをなくすためには有効な取り組みです。
しっかりと報酬を支払い、短期間でもお互いの理解を深め、ギャップを埋めることはアンマッチを防げますし「本当に採用していいのか?」という判断材料を集める期間を生み出せます。
ダイレクトリクルーティングへ着手
ダイレクトリクルーティングとは「採用したい人材に企業側から直接連絡を取ってきっかけを作る採用方法」の一つです。
こちらから一方的に思いを寄せても、求職者が自社に入社したいと思わなければ応募には至らないでしょう。求職者が企業HPを検索した時に、思わず入社したいと思えるような情報が記載されていれば話は別です。
SNSやダイレクトリクルーティングサービスを活用して自ら求職者を探し出しても、求職者が求める情報を伝えきれなければダイレクトリクルーティングは成功しません。
自分たちの仕事で手一杯という気持ちもわかります。
そんな時には求人ページを外注する手段もあります。
良い人を採用するための先行投資として、HPの見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ

自社にとっての「良い人」の採用は簡単ではありません。
しかし、たった1人の社員がきっかけで会社は大きく成長するもの。
目の前のやらなければいけないタスクをこなすことも大切ですが、自社の成長のために今一度「良い人」の採用を検討してみてください。
うまくいけば、何倍もの売上・利益に繋がる可能性だってあります。
採用活動の方法を見直し、素敵な社員さんを採用できますように。